2013/03/08

次世代スマートフォンOSについて知っておく


1月にスペインで開催された展示会 Mobile World Congress 2013 (MWC) ですが
Android製品のニュースのほかに
新しいOSのニュースがたくさんありました。
あまり関知していなかったのですが
試作品どころか、すでに発売予定の製品まであるようです。

そもそもOSって...
イメージ的にはいわゆる「アプリ」と、メカ・機械としての物理的な「スマートフォン」の
橋渡しをしている感じのソフトです。
コレのおかげで、開発者はかんたんにアプリを作ったり
使う人は説明書も読まずに「経験からなんとなく」新しいアプリを使えたりします。

iPhone・iPad に採用されているAppleの「iOS」と
「Apple以外のヤツ」と言えるGoogleの「Android」の2つが今の主流ですが
その市場を奪うべく、新OSの開発がすすんでいます。
それぞれを見ていきたいと思います。

Firefox OS


オープンソース(ソフトウェアの「設計」を一般公開していること)団体「Mozilla」の開発するOSで
もちろん、このOSもオープンソースです。
HTML5(ホームページとかを実現している言語の新しい規格)で作られたアプリが動作します。
日本ではKDDI、ソニーがサポートを表明しています。
世界的にも韓国LG、中国ZTE、Huawei、仏Alcatelなど
多くの会社が参加表明しています。

参入するKDDI石川氏のインタビュー。
「オープン」なことが採用の決め手になったようです。
MWCで発表されたFirefox OS搭載の端末は低いスペックばかりでしたが
KDDIとしては必ずしもローエンド向けと位置づけているわけではないとのこと。
大前提として「iOS」や「Android」を否定する話ではないことを理解していただきたい。我々がFirefox OSとTizenの両方を比べたのは事実で、そこで感じたのはTizenはどちらか(iOSとAndroid)に似たものになると思います。Firefox OSのほうがオープンであり、アーキテクチャーの観点では省電力性が高いですね。
試験用の端末や今回発表された端末はシングルコアですが、これから性能も上がってくるのは間違いない。機能的に(今日のスマホと)遜色のないFirefox OS端末がこれから作られるでしょう。ローエンドだけにフォーカスしているわけではないです。 
最終的にはHTML5に集約されていくのではないでしょうか。その流れは確実だと思います 


中国のZTE社は、MWCで発売を前提とした端末を発表しています。
夏頃の発売ということなので
もっとも早く実売される新OS端末になりそうです。
アプリストアも用意されている様子。
Firefoxのアプリは専用のアプリストア「Firefox Marketplace」から入手できる。HTML5ならではの機能として、アプリをインストールせずに試すことができるのが特徴。気に入ったら実際に端末内にインストールできる。


MWCで発表された端末は、概してスペックが高くなく
安価に販売できそうなものばかりです。
実際にFirefox OSの必要とするハードウェアのスペックは
ほかのOSより、はるかに低くてOKなのだとか。
安い端末が途上国を中心に広まれば
これからの主流になる可能性もありそうです。

アプリをHTML5に限っているのが大きな特徴と言えそうです。
HTML5は標準のWeb技術だけでアプリが作成できるため
ネイティブアプリ(AndroidやiOSのアプリと同じようにつくった、従来型のアプリ)よりも
作成の敷居は低く、汎用性は高くなります。
HTML5アプリは他のOSで「ほぼ」そのまま使うことができます。
たとえばFirefoxOS向け(...「〜向け」という考えがそもそも無くなってくるのですが)に作ったアプリを
ちょっとだけいじればTizen(後述)でも使える、というイメージです。
普及がすすめば共通化がすすみ、将来的にはそのまま使えるようにはなっていくと思います。
上記のKDDI石川氏のおっしゃる通り
今後はHTML5のアプリが主流になっていきそう。

ほかの「新OS」はHTML5アプリに加え
従来型のネイティブアプリにも対応しています。
Firefox OSがHTML5に絞るのは、とても思いきった決断です。
Firefox OS自体の構造はシンプルになり、開発が容易になってコストも下がるなど
利点はいろいろありますが
アプリが実現できる機能に制約が出てきたり
アプリの動作が相対的に遅くなったりという弊害は避けられないと思います。
どう上手に「ごまかして」いくかが、開発者の腕の見せ所です。

Tizen


「タイゼン」と読むらしいです。
米Intel社と韓国Samsung社が中心となっているOSで
Androidと同じくLinuxベースのOSです。
これも開発はオープンソースで行われているそうです。
HTML5アプリのほか、ネイティブアプリにも対応します。
日本ではNTTドコモに加え、富士通、NECカシオ、Panasonicが参加を表明しています。
また、ソフトバンクが合併をすすめる米Sprint社、中国のHuawei社も参加します。

日本企業で一番乗り気に見えるドコモは
まずはTizenをボリュームゾーン端末のOSとして使い、
Android端末とは使い分けるようです。
ドコモのスマートフォンの主軸はAndroidだが、Tizenをやるからといって、Androidを縮小するわけではないという。「勝負しているメインはAndroidで、ハイエンド端末では当然やる」と永田氏。当所、Tizenがボリュームゾーンをターゲットにすることもあり、当面は”すみ分け”が行われるようだ。端末は、サムスンが今年後半にも1機種を投入する見込みだ


試作機のレビュー。
使用感はAndroidとあまり変わらない模様です。
基本的なユーザーエクスペリエンスがあまりにもAndroidのそれと似ているように見えるため、時間をかけて練られてきたこのOSに興奮を感じるのは難しい。それでも通信事業者がTizenを支持すれば、このシンプルさと親しみやすさが、結果としてサムスンにとっての大ヒット製品につながる可能性はある。

Ubuntu Touch




「Ubuntu」自体はコンピュータ向けのOS、Linuxの一種としてとっても有名です。
Canonicalという会社の支援は受けていますが
オープンソースで開発されています。
Ubuntu TouchもLinuxベースです。
ネイティブアプリも動作するようですが(アプリはLinuxみたい開発しろよ!って書いてある)
HTML5アプリにも対応しています。

10月に公開が予定されていますが
すでに開発者向けのバージョンは公開され
Nexus7やNexus4にインストールして動かすことができます。
レビュー記事も出始めています。しかも、なんか好評。
「Ubuntu Touch」を直接触ってみた。第一印象としては、それは「Firefox OS」やサムスンが支援する「Tizen」などのライバルよりはるかに勝っていると言えるだろう。
このソフトウェアは、一般公開はずっと先であるのに、非常に反応が良く、高速に思えた。同じようにMobile World Congressで紹介された、Firefox OSやTizenが情けないほど未完成だったのとは異なり、Ubuntu Touchは実際の製品で利用する準備ができているように見えた。Ubuntu Touchのデモを行ったNexusデバイスが高速だった一方で、TizenやFirefox OSには、性能の劣る安価なデバイスが与えられていたことは注目する価値がある。
ファイヤーフォックスOSなどは開発途上ということもあり動きのぎこちなさが目立ったが、「ほぼ4年を開発に費やしている」(ケニヨン氏)というウブントゥは実用に耐えると感じさせる滑らかさだった。米欧メディアからも好意的な評価が相次ぎ、米ITメディアのCNETは「MWCのベスト製品・サービス」としてウブントゥを選んだ。


記事でも言われていますが、MWCで発表されたFirefox OS機はスペックが低かったので
比較的ハイスペックなシリーズであるNexusで動作させたUbuntu Touchとは
そのまま比べることはできません。
しかし、「少なくともNexusレベルのスペックなら快適に動作するよ」という点を
ほかの勢力より先に明らかにできているのが、大きなポイントだと思います。
「反応がいい」という第一印象を与えられているので
販売戦略が、まずは成功していると言えます。

Sailfish OS



ダークホースの中のダークホース。
フィンランドのベンチャーJolla(ヨラ。と読むらしい。)が開発。
同じフィンランドの携帯会社Nokiaの出身者が立ち上げた会社だそうです。

もともとNokiaとIntelが「MeeGo」というモバイルOSを開発していましたが
NokiaがWindows Phoneに集中することにしたため、MeeGoの開発は止まりました。
実はそのMeeGoはTizenの一部のベースにもなっています。
そんなNokiaがイヤになった人々が独立し、MeeGoをベースに開発を続け
Sailfish OSが誕生したという、ヤダなんかカッコいい経緯の会社。

面白いことに端末の開発も、このJolla自身が手がけます。
端末とOSを一緒に開発していることは
インタフェースの微調整や自由な機能を実装ができるわけです。
ソフトウェアとハードウェアの一体感がある
とっても気持ちのいい製品ができる可能性があります。
そう、アイフォーンのようにね。(...マネ。)

アプリはHTML5の他、ネイティブアプリもサポートします。
将来的にはSailfish OS自体を他社にOEM供給することも考えているんだとか。
無料提供されているOSがある中で
有償OEMはとても難しそうですが、それだけ訴求力のある製品ができあがれば
とっても面白そうです。
たぶん、今Appleが「iOSをOEMで売るよ」って言えば、買う会社はあると思うので
不可能ではないとは思います。
普及するまでお金が持つのかな。というのが心配ですが。

...で?

thinking / Victor Bezrukov


大企業の主導するTizen、オープンソースOSの実績があるUbuntu Touch、
オープンソースブラウザの実績が大きいFirefox OS、
ベンチャー企業のSailfish OS。それぞれみごとに個性的なのが面白いですね。

アプリに関しては、当初は先行するiOSやAndroidの差を埋める意味もあり
開発コストの低いHTML5アプリが中心の展開になると思うので
ほとんどのアプリの使用感はあまり変わらないんじゃないかしら。

個人的には低スペックで動きそうなFirefox OSが盛り上がってほしいです。
低スペックでOKということは製品に採用されるハードルが下がります。
小型・薄型化はもちろん、スマートフォンに限らずリモコンとか家電とか
びっくりするようなものが「スマート」になれば面白そう。

Tizenは大企業が多いのが、足かせになるかもしれません。
それでなくとも多数の大企業が参加するお話はまとまりにくいものですが
主導するIntelやSamsungが下心を見せすぎると普及は難しいかも。

iOSはAppleが端末・コンテンツで収益をあげます。
AndroidはGoogleが各企業に無償で提供し、広告収入だけをGoogleが得ることで
先行するiOSの市場に食い込みました。
独占のApple、住み分けのGoogleという感じです。
いまはIntelは半導体を、Samsungは端末を売ってナンボです。
開発負担と利益のうまーい分配ってなかなか考えづらいです。

また、各企業が新OSを必要とする背景に
無償のAndroidへの不満があるのは間違いないわけです。
機能面ならともかく、Googleの方針への不満だとすると
TizenはAndroidと同じことになっちゃう気がビンビンします。

新OSの陣営で一番お金とパワーはありそうなので
最初は有無をいわさず製品がガンガン出てきそうではあります。


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